Thursday, March 19, 2009

活字と心中するつもりの男



小林さんに初めて会ったのはもう8年前になります。
活版印刷の保存と伝承に心血を注ぎ、志半ばで亡くなった私の昔の上司が「活字と心中するつもりの男」と呼んだ。小林さんはそういう人です。

21世紀に入ってからさらに活版のシステムを継続強化するという選択をした印刷所の存在自体が奇跡なのだと思います。私が活版に出会った頃、活版はもっと見捨てられて絶望的な状況でした。小林さんの選択はまさに心中する覚悟で望むことでした。近年若い方が活版を見直しはじめたり、注目されることが多くなったことは驚くべき現象です。小林さんもきっと想像しなかったことでしょう。



小林さんは手がとても美しいんですよ。ふわりと力が抜けたような薄い手。職人の手とイメージする無骨な感じが全くないんです。自ら書いた文字の原図を手にしています。

私は小林さんの見た目が好きなんです。私が一緒にもの作りに向き合える人はいつも空気の美しい人です。そういう自分の感覚を私はとても大切にしています。

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