Thursday, March 19, 2009
活字と心中するつもりの男
小林さんに初めて会ったのはもう8年前になります。
活版印刷の保存と伝承に心血を注ぎ、志半ばで亡くなった私の昔の上司が「活字と心中するつもりの男」と呼んだ。小林さんはそういう人です。
21世紀に入ってからさらに活版のシステムを継続強化するという選択をした印刷所の存在自体が奇跡なのだと思います。私が活版に出会った頃、活版はもっと見捨てられて絶望的な状況でした。小林さんの選択はまさに心中する覚悟で望むことでした。近年若い方が活版を見直しはじめたり、注目されることが多くなったことは驚くべき現象です。小林さんもきっと想像しなかったことでしょう。
小林さんは手がとても美しいんですよ。ふわりと力が抜けたような薄い手。職人の手とイメージする無骨な感じが全くないんです。自ら書いた文字の原図を手にしています。
私は小林さんの見た目が好きなんです。私が一緒にもの作りに向き合える人はいつも空気の美しい人です。そういう自分の感覚を私はとても大切にしています。
活字の意地
Wednesday, March 04, 2009
合字のこと
ぬりえ書体見本帳の上から6段目に見なれない文字が5つ並んでいます。このぬりえで初めて見たという方がとても多いのです。学校の英語の授業では教えてくれなかったのですからそれは当然のことだと思います。
小文字のfの次にiやlがくるとぶつかりの気になる黒い塊が生じます。これを解消するために合字に置き換えることは欧文組版のルールです。そうすると図の様にリズムの良い組版になります。活字の時代にはたいてい5つの合字が揃っていました。
fとiを組み合わせたものをエフアイと読みます。「そんなの分かるよ。」って言われそうですが、私が初めてこの合字と出会ったのは欧文のダブルケースの中のもの言わぬ鉛の活字でした。しばらく逆さまの文字とにらめっこしたのですが、私はこの文字が読めなかったのです。そして隣にいた職人さんがそれをエフアイと呼んだのを聴いて、そう呼んでいいのだと知ったのです。日本語で書かれた欧文書体の解説書の中で合字に読み方が書いてあるものを一度も見たことがありません。それで敢えてここでは書いてみました。少し間が抜けているかもしれません。でも私の様に良い先生が隣にいるとは限りませんから。
ある英米文学研究室のGaramond
ある英米文学研究室のtemp pressのぬりえ書体見本帳・Illuminating letters-Garamondの場合。アルファベットで綴られた文学をご専門に研究されている方がいったいどんな風にこのぬりえに取り組んでくれたのでしょう。大変興味深いですね。
まず真っ赤な文字がとても美しいですね。何故赤い色で塗ったのでしょうか?他にも様々な色があるのに。何故この文字だけ塗ろうと思ったのでしょうか?他にも様々な文字があるのに。何故文字の中を塗ったのでしょうか?文字の外側にも塗る部分があるのに。
そういうのがとても面白いと思いませんか?このぬりえを塗ったらGaramondについて分かるのでしょうか?私はそんなことは保証しませんが、あなたがこの書体に極めて個人的な距離を持つことになるだろうと想像します。書体をどういう風に知っているかはあなたの書体チョイスに影響を与えます。Garamondをレタリングしたことある人をデザインを学ぶ学生の中に見つけることは容易ですが、Garamondをぬりえしたことある人が何人いるのでしょうか?そういう経験のヴァリエーションがあなたの書体チョイスの個性になって必ず実を結ぶはずです。
Illuminateは彩色する、輝かせる、解明するという意味です。
彩色された文字はあなたの前で活き活きと輝きはじめます。それは文字を解明する旅へ漕ぎ出すあなたの行き先を照らし続ける光となるはずです。
もしぬりえをしてみたくなった方は青山にある旅をテーマにした書店・BOOK246の店頭とweb通販でお買い求め頂けます。
temp pressのインクベラ
Monday, March 02, 2009
ご褒美レシピ
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