Tuesday, August 11, 2009

次の派遣先



tempとは、派遣という意味です。京都・一乗寺、大阪・江戸堀と派遣され、次の派遣先はいったいどこになるのでしょう?

最終日二日前




こんな知らせが届きました。

「先月から急に活版印刷の問い合わせが増え、見学にいらした方からこの展示のことを伺いご連絡いたします。」

大阪で活版印刷所を営む会社からのご連絡でした。展示をご覧下さった方の活版へのさらなる興味が、地元で活版印刷を営む印刷所を繋ぐ。わたしの展示でその様な素晴らしいことが成し得ると思いも寄らなかったので感激しました。

職人さんであるお父様とお手伝いなさってるお母様とご連絡下さった息子さんの三人で、私の展示を見に来て下さいました。職人さんであるお父様は展示の活字シートや私の撮影した活版印刷所の写真を見ながら、大阪のルールとの違いや当時のお話を色々して下さったとギャラリーのオーナーの石川さんより伺いました。

私が今回「わたしの馬棚」という紙の活字シートを作りたかった理由の一つは、これを持って多くの職人さんからさらなる技術のリサーチをしようと考えているからです。大変薄く軽いため持ち運ぶことが出来て、並べた時に実際のサイズですから職人さん達は当時のことをより良く思い出せるんじゃないかと思いました。私は彼らと思い出話ではなく、具体的な技術の話をしたいと思っています。彼らは職人ですから道具を目の前に持っていくのが一番だと考えました。

両方の結果がわずか一ヶ月の間に現われたことは私自身が一番驚いたことでした。

明晃印刷株式会社さんでは、お問い合わせ頂ければ活版印刷の工場を見学させてくださるそうです。小さな工場とのことですから、見学の際にはどうぞ十分ご配慮下さい。大阪で活版印刷に興味のある方は訪ねてみてはいかがでしょうか?どうぞそれを新しいもの作りに繋げて下さい。こちらで印刷所の様子が見られます。

明晃印刷株式会社

553-0003
大阪市福島区福島3-5-25
TEL 06-6451-4438 
FAX 06-6451-9570

www.meiko-print.co.jp
info@meiko-print.co.jp

活版レシピ「わたしの馬棚」展示解説



展示品リスト

1.活版レシピ「わたしの馬棚」
2.活字書体見本帳「金属活字活版印刷ものがたり」限定版
3.六つの小林さん
4.すだれMac Book
5.わたしの馬棚(インスタレーション)
6.蒼頡四眼別漢字分布表
7.蒼頡スコープ
8.蒼頡像
9.temp pressのプロダクト



活版レシピ「わたしの馬棚」は、14ポイント岩田明朝体の活字ケースを分類ごとに色分けした16枚の活字ケースを原寸サイズでプリントした、一般的な文章が組める最低限の漢字が入った基本セットです。解説書が付いていますのでそれを見ながら和文活字ケースの配列の仕組みが理解できます。



活字書体見本帳「金属活字活版印刷ものがたり」限定版(サイン入り)東京・板橋にある活版印刷所「内外文字印刷株式会社」の保有する、岩田明朝体初号42ptから3.5ptのすべての活字が活版印刷された400ページに及ぶ活字見本帳です。活字と心中するつもりの男と題するエッセイと同社会長小林敬さんのポートレイトが活版刷りされた蛍光色のラベルが黒いスリーブケースに映える限定版を作りました。銀のペンで「どこまでもグーテンベルク」と小林さんのサインが入ってるのはあっと言う間に完売。



見本帳の作者である小林敬さんのポートレイトを、長く使われて来た活字ケースを裏返して描きました。色はわたしの馬棚の分類と同じ色で6種類あります。貼ったり剥がしたりした古いラベルが脇から覗き、ビビッドな蛍光色のモダンなイラストレションとのコントラストがとても面白いです。まるでシルクプリントの様ですが、一枚一枚手書きの一点モノです。もちろん活字ケースそれ自体が一点モノであることは言うまでもありません。



「すだれMac Book」は活字ケースを中表に二枚合わせて、銀色にペイントしてアップルのロゴの入った木製のMac Bookです。遠目には17インチのMac Bookにしか見えないほどそっくりです。これは活字がすべてコンピューターの中に入ってしまったが故に、活字棚はこの世から無くなろうとしていることを象徴しています。普段からMac Bookを写真の様に机に立てて、馬棚を模して遊んでいることを活版印刷側からアプローチしました。



わたしの馬棚(インスタレーション)今回新製品をより体感出来る様に実際のサイズで馬棚を再現しました。活字ケースは紙になり棚はダンボール製でどちらも大変軽量です。そして緑に染められた棚はまるで黒板のようで、これからはじまる活版レシピのレッスンを予兆させます。隠れた見所は活版インクで緑に染められていること、それと桟が行間を作るために木製のインテルで出来ていることです。出来たばかりの時はほんのりインクの香り漂うまさに活版印刷所をそこに持ってきた様なインスタレーションとなりました。



蒼頡四眼別漢字分布表は、部首別に並んでいるおよそ9300文字の漢字表の中にわたしの馬棚の漢字がどの程度分布しているのかを示しています。わたしの馬棚と対応する色、大出張(ピンク)、小出張(ブルー)、泥棒(イエロー)、袖(グリーン)の4種を異なる蛍光マーカでマーキングしました。



蒼頡スコープは四眼のスコープです。この位置からはまるで模様の様にしか見えない蒼頡四眼別漢字分布をスコープを使って覗きます。そうすると一部だけがクローズアップされ漢字がはっきり読めます。活字棚全体からたったひとつの文字を探す文選工の視覚はまるでこんな風だと思います。急にそこだけにピントが合う。私達はこのスコープを上手に使いこなせません、何故なら眼が二つしかないからです。いったい誰がこんなものを使いこなせるというのでしょう?



中国には漢字を作ったとされる四つ目の伝説の人物がいます。もちろんそれは作り話です。実際は男性として描かれていますが、わたしは女性として描きました。漢字という膨大で把握しきれない文字に対しての畏怖を昔の中国の人は人を超えた人物像で表したのではないでしょうか?自分たちが漢字を把握し切れないのは目の数が足りないからだという言い訳を作ったのかもしれない。彼女の名前は蒼頡(そうけつ)、スコープは彼女専用のもので、漢字表は彼女が四つの目で漢字を別々に把握出来ることを表してる。



通常のプロダクトに加え、限定のTシャツを製作しました。一つはすだれTシャツ、ひとつは蒼頡Tシャツ。どちらもこの夏誰も着ていないだろうオリジナル商品です。

Saturday, August 08, 2009

地獄の季節/ギャラリーアンフェールの場合



–Quel siècle à mains!– Je n' aurai jamais ma main.

Arthur Rimbaud, Une saison en enfer «Mauvais sang»


何という手の世紀だろう!俺は決して手を使うまい。

アチュール・ランボー 地獄の季節「悪い血」より


初春のご挨拶を覚えていらっしゃいますか?お手元の赤いカードをひっぱり出してテキストを照らし合わせてみて下さい。

初春の謎は「誤植」です。皆さんには大変申し訳ないと思いながらわざと誤植のカードをお送りしました。京都のGallery enfer(地獄)でUne saison en enfer(地獄の季節)の答え合わせが出来る。これが今回のフェアの秘密の展示でした。

この企画はギャラリーアンフェールの七里さんのご協力あって実現しました。フェア右横のキャビネット内のコーディネートは彼女の手によるものです。指輪をした女性の手のオブジェと共にクラシカルなキャビネットの中に飾られた真っ赤なカードは、ヴェルレーヌとの放蕩三昧中「マドモワゼル・ランボー」と周囲に陰口を叩かれた時期に書かれたランボーの傑作「地獄の季節」を見事に体現していました。

随分と手の込んだいたずらですが「悪い血」のせいでしょう。
2009年のtemp pressは「悪い血」が騒ぐそういう一年にするつもりです。

恵文社一乗寺店フェアおさらい





京都で初めて、temp pressのすべての商品をお手に取っていただけるフェアを恵文社一乗寺店で開催しました。

初めての試みとしてtemp press apparelという服飾部をはじめました。昨年2月に発表した「CHANSON DE CLAUDE GARAMOND」から楽譜を印刷したTシャツ、昨年7月に発表した「Illuminating letters-Garamondの場合」からGaramondを切り抜きながら書体について思考した様子をデザインしたTシャツを製作しました。



GREAT TYPE DESIGNERS SERIESは、書体ごとに私が感じた覚書がパネルで読める様になっています。タイプカードに書かれている書体史における各書体の一般的な評価と、実際デザインに使ってみて各書体に感じることはまた別のものなので、私個人が感じている書体に対しての感覚をお伝えしたいと思いました。

Typographyの日本語訳は「活版印刷術」です。あらゆる活版印刷の工程すべてを指します。何かとても難しい様に感じますが、Typographyに私が敢えてルビをふるとすれば、「じつよう(実用)」としたいと思います。使ってみて、それをどう感じたのかをたくさん積み重ねるだけです。

大切な誰かにプレゼントを選ぶ時、色々なことを思いめぐらせるはずです。それとまったく同じです。Typographyは文字を使って相手に伝えたいメッセージをどう伝えたらいいかを真剣に考えるという技術です。ここでポイントになるのは相手を思いやるというイマジネーションです。どう思いやるかは、どう書体を選ぶのかと同じことなのです。この書体カードを贈りたいなと思う相手が思い浮かんだとしましょう、それは逆に考えれば書体をチョイスするということなのです。どうしてその人に贈りたいなって思ったのでしょう?そのことを深く考えるのがTypographyなのです。

GREAT TYPE DESIGNERS SERIESは買い物をしながら書体チョイスを学べるとても面白い商品なのです。

Monday, August 03, 2009

ART-iT and FLAG OSAKA




A 4-Eyed Girl

ART-iTのウェブコラムでレビューを書いて頂きました。でも英語ですよ。自動翻訳付いてますがまったくおススメできませんので、あしからず。多分日本語は大爆笑!でも違う所でも大爆笑!だと思う。



新しく出来たばかりの外国人向け・大阪のアートフリーペーパー、FLAGの記念すべき第一号に紹介していただきました。デザインもとても素敵でこれから大阪のアートシーンをどんどん盛り上げてくれることでしょう。

外国人から見た「活版レシピ・わたしの馬棚」改めTypo recipe- Notes about Japanese type cases


展示がはじまる前もはじまってからも、このプロジェクトの説明を英語で求められ続けている。未知の漢字に対しての憧れや西洋のタイポグラフィーとの決定的な違いを解説している「わたしの馬棚」という商品と展示が彼らの興味をそそっているようです。

これは私にとってとても嬉しいことです。何故なら私が外国の活版印刷所を訪ねる時に、スーツケースの中に入る彼らへのお土産として考えたものでもあるからです。私が長年外国の人に上手く説明出来なかったジャパニーズタイポグラフィーをこの機会にもっと分かりやすく解説してみようと思っている。

Saturday, August 01, 2009

恵文社一乗寺店ウェブ限定Tシャツ



ILLUMINATING LETTERS - Garamondの場合 Tシャツ
Color/White or Gray
Size/Youth M(女性用)
price/¥3,900

書体を切り抜いて、塗って。私がガラモンを思考したtemp pressの机の上をそのままプリント。着ると想像するよりずっとカワイイです。あまりに可愛くて白とグレーの二種類を作ってしまったくらい。私の今年の夏のヘビーローテーション。



CHANSON DE CLAUDE GARAMOND Tシャツ
Color/White
Size/Youth M(女性用)
price/¥3,900



ガラモンさんのバックプリントがなにより猛烈にカワイイんですよ。楽譜の映える白のみの展開ですが、シンプルで合わせやすいです。日本語歌詞のシートもついていますからフランス語が分からなくても大丈夫。

どちらとも恵文社一乗寺店の期間限定ウェブショップにてお買い求め頂けます。ご注文はこちらから。



temp press GREAT TYPE DESIGNERS SERIES。ウェブ画面右端の上記のアイコンをクリックして下さいね。

プリント中



皆様多くのご注文ありがとうございます。大きなTシャツから小さなTシャツまでせっせとプリント中です。お手元までもうしばらくお待ち下さいね。