Friday, April 10, 2009

馬のある風景



ここに合成された写真がある。
これは内容の異なる二種類のスライドから作られている。



ひとつはレーモン・クノーの「百兆の詩篇」、もうひとつは府中競馬場。ステレオ写真のスライド箱を開けたら一番上にあった。これには思わず口を緩めてしまいました。

今年まだ厚手のコートが必要な頃、ある方が写真と同じクノーの詩集を見せてくれました。その方は「僕が物書きという仕事を始めるきっかけになったのは実は競馬なの。」そういって初めての著作にまつわるお話を聞かせてくれました。「僕にとって競馬はラッキーなもの。文と馬は一緒に思い出される、競馬場の群衆もその本と繋がってる。」

私にとっても文と馬はセットです。活版印刷において活字がある場所を馬棚(馬)と呼ぶ。私に文選の手ほどきをして下さった職人さんは、ギャンブラーで競馬が大好きだったので、文字+馬+競馬は私にとってもワンセット。そしてその時は口にしませんでしたが、すでに着手している新作が馬にまつわるものだった。

私はあの日よりもっともっと馬棚をそして文字の群衆を凝視しています。そうしたら私の目の前にクノーの詩集と府中競馬場が飛び込んで来た。あの日がもう一度やってきた。そうやって写真は折り角、私の思考を助けてくれます。私にとって写真はいつも未来を見せてくれる。

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